アーセナルに所属するメスト・エジル(29)は22日、ドイツ代表からの引退を表明した。その主な理由としてドイツサッカー連盟(DFB)のラインハルト・グリンデル会長による扱いを挙げている。
エジルは22日、3回に渡って自身のツイッターを更新。W杯前にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と写真を撮ったことについての声明を出すと、その数時間後にはその写真に関するドイツメディアでの報道やDFB、一部のスポンサーの対応を批判する内容のものを投稿。最後にはグリンデル会長を痛烈に批判的な言葉を送り、代表からの引退を表明した。
エジルは写真の件で大会前に、ヨアヒム・レーブ監督の要望に応えて、同じく“エルドアン写真問題”で避難されていたイルカイ・ギュンドアンとともにグリンデル会長に面会。その後、DFBはプレスリリースで、2人が会長に行動を説明したことですべてが収まったと発表し、2人はW杯に向けてサッカーに集中することを誓った。
しかしエジルは、以前政治家として移民に対して差別的な発言をしたことで知られるグリンデル会長の大会後のインタビューでの発言に失望を覚えたようだ。声明では「彼は僕に対して公に自分の行動を説明すべきだと話し、ロシアでのチームの成績を僕のせいにした」と非難すると、「僕はもう、彼の無能さ、仕事をしっかりとこなせていない人をかばうためのスケープゴートでいたくない」とも強調した。
「あの写真を撮ったあと、彼は僕をチームから外したがっていたことは知っている。何も考えず、誰にも相談せずにツイッターで自分の見解を伝えていたのだからね。ヨアヒム・レーブとオリバー・ビアホフ(チームマネージャー)が僕のことをサポートしてくれたが、グリンデルの目には、僕たちが勝てば僕はドイツ人に、負ければ移民に映るんだ。それは、ドイツで納税しても、ドイツの学校に寄付しても、ドイツのチームとともに2014年にW杯を勝ち取っても、僕はいまだに社会に受け入れられていないからだ」
エジルはさらに自身に対する人種差別的な言動に言及し、政治家やファンの発言などを引用している。そして、次のように続けた。
「DFBや他の大勢からの扱いにより、ドイツ代表のユニフォームを着ることを望まなくなった。歓迎されていないという気持ちがあり、僕が2009年の代表デビュー以来何を成し遂げたのかが忘れられているような気さえする。人種差別的な思考の背景を持つ人物が、2つの祖国を持つプレーヤーたちが多数属する世界最大のサッカー連盟のトップを務めることは許されてはいけない。そういう考え方は、彼らが(組織として)代表する選手たちにふさわしくない」
「僕はプライドを持って、刺激を受けながらドイツのユニフォームを着ていたが、今はそうではなくなった。僕は今まで常にチームメイトやコーチ陣、ドイツの良い人々のためにすべてを尽くしてきたので、この決断は非常に難しかった。だが、DFBの幹部の方々が、僕のルーツを軽蔑しながら僕のことを利己的な目的で政治プロパガンダに利用するというのなら、もう我慢はできない。僕はそのためにサッカーをプレーしているわけではないし、黙って引き下がることはない。人種差別は絶対に受け入れられてはいけない」
20歳でドイツのA代表でデビューを果たし92キャップ(23ゴール)を記録したエジル。エルドアン大統領との写真よりも大きな波紋を呼ぶような衝撃的な言葉で、代表からの別れを告げた。